5.化生放作戦と防空戦力

 本項では、化生放作戦を大きく「消極的防御」と「積極的防御」に区分することにする。消極的防御は、化学兵器と投下された後の被害を最小化するために取られる諸般の措置を意味し、積極的防御は、敵の化学兵器攻撃を事前に封鎖、又は抑制するための方策を意味する。

 現在、通用する「化生放作戦」の意味は、探知、識別、保護、除毒等を主に消極的防御に局限されており、化生放部隊の編成及び諸般の作戦手続等も消極的防御の理論から大きく外れていない。

 周知の通り、化学兵器は、人間が戦闘員や民間人は勿論、草木も枯らしていまい、生態系すら荒廃させてしまう。現在、化学兵器のこのような残虐性を見ると、一旦化学兵器が投下されれば、どんな立派な防御手段を備えていても、その被害は、夥しいほかない。化学兵器に対する恐怖を最小化するためには、北朝鮮の化学兵器攻撃能力自体を無力化させるか、攻撃が敢行されても我が軍地域に投下される以前に撃墜する「積極的防御」手段が講究されなければならない。

 北朝鮮の化学兵器生産施設は、全て平壌以北地域に位置しているが、貯蔵所は、大部分休戦線付近に密接しているものと知られている。北朝鮮が休戦線付近に前方配置している攻撃機と地対地ミサイルを利用し、奇襲攻撃を敢行する場合、首都圏到達以前にこれに対処できる時間的余裕は、5分乃至10分に過ぎない。

 従って、北朝鮮の化学兵器攻撃を早期に無力化させるためには、彼らの攻撃企図を事前に探知し、精密爆撃により攻撃の根源地を破壊して、発進に成功した航跡は、早期に撃墜する空中防御体系の基本原則が体系的に樹立されなければならない。

ア.化学戦脅威と情報収集能力

 北朝鮮の化学兵器の攻撃脅威を事前に探知するためには、高度の情報収集能力が要求される。北朝鮮の化学兵器は、大部分飛行場や誘導弾基地に隣接した地域に貯蔵されており、有事の際、迅速な移動展開が可能である。また、体積が小さく、外形上特徴がない容器に貯蔵され、移動できる化学兵器の特徴は、攻撃徴候の事前探知を難しくする要因となる。

 化学戦の脅威を早期に探知するためには、化学兵器生産所、貯蔵施設、飛行場、誘導弾基地等の動態を持続的に監視できる情報収集体系の確立が要求される。このような類の情報収集は、通常、人工衛星、無人機、早期警報機、航空偵察機等の空中情報収集体系を通して遂行される。

 影像情報、信号情報等を収集する搭載感知機の性能が微弱だった過去の空中偵察は、低高度においてのみ遂行することができた。しかし、軍事科学技術が革新的に発展した今は、危険を随伴する低高度偵察よりは、高高度遠距離での情報収集が占める比重が漸次大きくなっている。

 特に、去る1990年度に発生した湾岸戦以後、人工衛星による情報収集の重要性が急速に拡散され、米国、日本、フランス等の先進国は、軍事衛星開発に拍車をかけている。現在、米国、日本等の主要国家が保有、運用している空中情報収集体系は、次の通りである。

 周知のように、勧告は、現在、RF-5A、RF-4C等、一部の戦術偵察機以外には、自主的空中情報獲得手段が皆無な実状により、対北情報収集は、全く米国に依存している。北朝鮮が保有している化学兵器の申告制を考慮すると、戦争徴候を含む対北情報を全く米国に依存することは、重大な冒険でないとはいえない。

 情報の正確性が戦争の勝敗を左右する事実は、数多くの戦史を通して、縷々と立証されてきた。最近、実施された国防分野従事者の認識調査結果でも戦力増強の対象分野計25個中、情報戦力への投資優先順位が最上位グループに評価されたことがある。

 しかし、自主的情報収集能力確保のための勧告の戦力増加投資は、戦争の一般原則に大きく食い違っている。米国の情報分野投資費が総戦力増強予算の10%を上回ることと比較すると、韓国の最近10年間の情報分野投資費は、約3〜4%に止まっているのが実状である。北朝鮮が核と化学兵器を総動員したいわゆる「One Blow One Stop」戦術を不意に指導する場合、これを事前に捕捉し、制止できなければ、我々が保有している高性能の兵器体系は、一時に役に立たないスクラップとなってしまうこともあり得る。

イ.化学戦脅威と精密爆撃能力

 北朝鮮の化学兵器攻撃に対する「積極的防御」の手段として2つ目に考慮されなければならない分野は、精密爆撃能力である。韓国軍は、「攻撃」よりは、「防御」を基本戦略としている。我々の意思だったのか、米国の圧力のためだったのか、軍事兵器体系又は単純防御を主とする兵器体系を重心に発展させてきた。

 しかし、現代の戦場において防御の概念は、「守勢防御」に局限されていない。通常的に技術の進歩は、攻撃者側に有利に作用する。充分な水準の早期警報能力が確保されれば、敵の攻撃徴候を監視することと同時に防御的機先を制することができる「先制攻撃」が可能となる。

 先制攻撃は、作戦技術次元では、相対方に対して、技術的方法を活用し、先ず攻撃を取る先攻を意味するが、敵の侵略徴候が明白な場合、戦争の名分面では、国際法上として正当な自衛の行為に属する。

 北朝鮮の化学兵器関連施設は、戦争指揮部等と共に、有事の際、最も先ず破壊しなければならない攻撃目標に設定されなければならない。全ての軍事作戦は、時期の選択が重要である。緊迫した状況が切迫して展開する戦争初期に優先的に遂行しなければならない作戦が遅延するか、適正時期を喪失すれば、これは、必ず敗戦の原因に直結し得る。

 作戦遂行の緊迫性、兵器体系の効率性等を考慮すると、休戦線付近に密集している北朝鮮の化学兵器貯蔵施設は、戦争初期に主として地対地ミサイルを使用して攻撃し、平壌以北地域の生産施設は、空中優勢確保後、主として地対地攻撃機による攻撃を指導することが適切であると判断される。

 現代戦では、特に地対地ミサイルの重要性が漸次大きく刻み込まれている。弾道ミサイルと巡航ミサイルに大別される地対地ミサイルは、過去、米国とソ連の主導で発展されてきたが、最近では、イラン、イラク等の中東国家は勿論、インド、パキスタン等の東南アジアの第3世界国家にまでも休息に拡散する趨勢にある。

 地対地ミサイルになおざりの韓国は、最後進国の身の上を免れないでいる。韓米間に結ばれた「ミサイル保障覚書」により、我々は、射程距離180kmと弾頭武器500kgを越えるいかなるロケット・システムも作ることができないためである。

 幸い、最近になって、長距離ミサイルの国内開発に対する関心が各界で高潮している。去る96年の韓米軍事会談において、米国側は、制限の幅を300kmまで上げられる柔軟な立場を見せたことがある。ある国防部関係者は、最近、「中距離ミサイル開発は、意思の問題で、能力の問題ではない」という自信感を披瀝もした。

 高度の隠蔽術により防護されている北朝鮮の化学兵器貯蔵施設に対するミサイル攻撃を正確に実施するためには、2つの事項が同時に充足しなければならない。指揮統制システムとの連係性及びPin-Point攻撃能力がそれである。寸刻を争う戦争早期の状況において優先的に使用される攻撃兵器は、必ず「見る目」と緊密な連係体制を維持していなければならない。

 空中監視体系を通して、敵の確実な攻撃徴候が探知されれば、これは、戦争指揮部と連結されたホットラインを通して、即時機械化された先制行動(攻撃)に連係されなければならない。朝鮮半島の領空を飛行する全ての兵器体系は、戦域航空統制本部(TACC)の統制を受ける。

 TACCは、戦争早期の指揮統制体制の核心でもある。従って、戦争早期に対応時間を最小化するためには、空中監視体制、戦略ミサイル等、核心兵器体系がTACCを中心に統合管理されなければならない。

 Pin-Point攻撃は、高度の航法・電子システムを下地に可能とすることができる。この点においてのみは、兵器体系が北朝鮮を圧倒していると見られる。北朝鮮のスカッド−Cミサイルは、およそ2,400mの平均誤差距離を持っているが、我々の玄武は、ほんの100m内外と比較的正確な攻撃が可能である。

 しかし、北朝鮮と韓国の能力を同一の物差しで測ってはならない。北朝鮮が戦争を挑発する場合、周辺国の世論などは、関心の対象とはならない。スカッド・ミサイルに化学兵器を搭載し、首都圏地域に対する無差別攻撃を敢行すれば、我々が受ける損害の程度は、ミサイルの誤差距離に無関係であろう。韓国側の立場は勿論、北朝鮮と異なる。

 有事の際、最短時間内に北朝鮮の化学兵器攻撃能力を麻痺させるためには、高度の精密性を随伴した攻撃が必要である。我々の半導体電子産業技術は、既に先進国の水準に到達している。積極的な投資と努力の裏付けさえあれば、敵の探知を避け、地形に沿って自由自在に動き、性格に目標地点に打撃する巡航ミサイルの開発までも可能と見られる。

ウ.化学戦脅威と空中防御能力

 空中浸透を通した北朝鮮の化学兵器攻撃を阻止するために、最終的に考慮しなければならない事項は、空中防御能力である。化学兵器を一杯搭載した北朝鮮の戦爆機やミサイルが首都圏上空で撃墜されれば、我々が負う被害の程度は、攻撃成功時と大きく変わらないものとなる。

 可能ならば、敵の攻撃を発進段階又は我が方の領土侵入以前に阻止しなければならず、このためには、完璧な早期警報能力が確立されなければならない。我が空軍は、このため、2000年代初盤までに4機程度の早期警報機を確保する計画を持っている。

 早期警報機の確保は、韓国の安保環境としてみるとき、優先的に推進しなければならない必須条件である。しかし、敵の空中浸透を100%監視できる充分条件では勿論ない。

 最近、英国で発行された国防専門誌Janes Weeklyの編集者であるクリパー・ビルは、「ロシアが空中早期警報機を無力化できるレーダー撹乱システムの販売に本格着手した」と言及したことがあった。勿論、このシステムの性能が具体的に立証されたことはないが、早期警報機に空中監視の全てを一任しては、混乱するという警鐘と成り得る。米国・日本は、現在、人工衛星を利用した早期警報体制構築を計画している。我々も、関心を持たなければならない分野ではないかと考えられる。

 早期警報体制により、空中浸透航跡が捕捉されれば、我々の防空戦力を総動員して、最短時間内にこれを撃墜しなければならない。戦術としては、北朝鮮の化学兵器攻撃は、主として地対地ミサイルにより実施されそうである。これを阻止するために要求されるものは、戦区ミサイル防御(TMD)体制である。弾道ミサイルを事前に防ぐTMD計画は、現在、米国を中心に世界各国において積極的に推進中である。

 この概念は、敵の弾道ミサイルが発射されれば、宇宙の監視衛星がこれを捕捉、米国の北米防空統制所に報告し、統制所は、これを付近に滞空中である戦闘機に連絡、空滞空ミサイルによる1次要撃を実施するものである。万一、失敗すれば、海に出ている航空母艦からスタンダード・ミサイルによる2次要撃を実施し、これも失敗すれば、現在開発中である射程距離160kmのTHAAD地対空ミサイルによる再攻撃を指導する。滞空中の人工衛星は、この全状況を把握、実施間に各級指揮所及び統制所に中継している。

 現在のTMD能力としては、地対地ミサイルの3段階飛破軌道(推進段階、中間段階、要撃段階)中、終末段階での要撃のみが可能な実状である。

 しかし、現在、米国は、長期間滞空無人機と高性能戦闘機等を利用した推進段階要撃体制開発を推進中にあり、衛星から発射されるレーダー・ビームを利用したBP(Boost Phase Intercept)も遅かれ速かれ実用化されるものと見られる。現在、推進されているTMD計画には、英国、イスラエル、日本、フランス、オランダ等10余ヶ国が参与している。

 最近、米国防部は、韓国の参与も持続的に要請しているが、まだ我々の公式的な立場は、留保された状態である。北朝鮮の核及び化学兵器の脅威が持続している現在の状況と周辺国のミサイル攻撃能力を考慮すれば、我々のTMD体系は、いかなる形態であっても速やかに構築しなければならないであろう。

 北朝鮮だけを対象にしてみると、朝鮮半島の短い縦深は、彼らの高性能航空機と弾道ミサイル攻撃に対する充分な対応時間の確保を困難にする要因となっている。従って、守勢的概念の防空体制とTMD体系は、朝鮮半島においてさほど効果的ではないという指摘が大きく台頭している。

 生化学弾を搭載した北朝鮮のミサイル攻撃により効果的に対応するために、戦術的に充分な早期警報能力を確保、敵の挑発徴候を早期に把握して、自衛的先制攻撃により発射施設を破壊する戦略の樹立が何よりも優先しなければならないと判断される。

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最終更新日:2003/05/04

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